一部で話題になってた『都市伝説解体センター』
クリアしたので感想をば。
後半からネタバレを含む感想になります。
呪いの箱、事故物件、異界... 「都市伝説」の正体とその向こう側にある真実... 呪物、怪異などの調査・回収を行う『都市伝説解体センター』。 その調査員である主人公が、能力者の廻屋渉とともにさまざまな依頼を解決していく、アドベンチャーゲームです。
サムネイルのグラフィックからわかるとおり、ピクセルアートの推理アドベンチャー。
テーマは「都市伝説」ですが、ホラーというよりはミステリー・サスペンス的な作風です。ジャンプスケア筆頭のびっくり怖がらせはないよ!
ゲーム難易度は非常に低く、選択肢の総当たりOKなので詰まることもないでしょう。総じてストーリーを楽しむタイプのゲームでした。
よかったところ
グラフィック(演出)
ドットでしっかり描きこまれたグラフィックは、それだけで魅了される何かがあります。
あえて粗めのドットで簡略化された探索シーンと、ムービー中のしっかり描かれたピクセルアートがゲームの雰囲気を下支えしているように感じました。
そもそも、「荒れたドット(モザイク)」の画像って、それだけで都市伝説化しそうな雰囲気ありませんか?
会話中のキャラクターイラストもドット絵でぬるぬる動く。表情差分も非常にバリエーション豊かです。
道中、事件と関連する都市伝説の「特定」と、その謎を解き明かす「解体」シーンがありますが、センター長さんのハイパー過剰演出で盛り上げてくれます。
お約束のように毎話やってくれるので、このBGMが流れ始めるとテンションが上がる。アニメの変身バンクみたいな。
あとこれはグラフィック演出とはちょっと違うかもしれませんが、主人公に電話がかかってきた時に、画面で震えているスマホと、その振動音のSEと、コントローラーの振動がそれぞれ連動していたのに地味に感動しました。丁寧だなあ。
ストーリー
ストーリーを楽しむゲームなのでそりゃストーリーが面白くないとならないんですが!
推理ものが好きでよく嗜む人には、ある程度の先読みができるくらいの推理難易度だと思います。
ですが、そのうえで「どう決着をつけるのだろう?」となるので、最終話で集束していく流れは大変よかったですねぇ……!
ストーリー全体のエンジンがかかるのがやや遅く、一話までだとまだちょっと入り込めない部分もあるかもしれません。(自分もそのタイプだった)
ですが、一話ラストの演出で「これは面白いかもしれない……」と思えてしまえば、それ以降はどんどん話に入っていけるのではないでしょうか。
面白そうな連続ドラマの一話目みたいなね。
自分はいっときいわゆる「洒落怖」系のまとめスレを読み漁っていたような時期があったので、出てくる都市伝説はわりと「知ってる」か「聞いたことある」くらいだったのですが、せっかく『都市伝説解体センター』なんて組織なんだからもっとたくさん出てもよかったんじゃないかな~とは思いました。
まったく知らない人が触れたら情報でパンクしちゃいそうですし、一話で一題材と考えればちょうどいいのかもしれませんが。
いまいちだったところ
操作性
主人公のあざみちゃんはメガネをかけることで特殊なものを見ることができたりするのですが、この「メガネの切り替え」がある部分はテンポが急に悪くなる感じがしました。
演出優先なのか、「メガネをかける」カットインが入るので、ここだけ操作がワンテンポ遅れます。
ゲームがカクつくわけでもクラッシュするわけでもないので悪いところとまではいかないんですが、人から話を聞いたり、物を調べたりする時は非常に操作テンポがいいので、相対的に気になりました。
あとはみんな言ってそうだけどオートセーブと手帳のフラグ管理。
オートセーブのアイコンは出るけど、「システム的に」やめどきがわからないのって、古いゲーム含めてもあまり経験がないな……。
ストーリー
よかったところでストーリー挙げてるのにイマイチってどういうことやねんという話。いや、でもそうなんです……。
面白かった。面白かっただけに、クリア後に非常に細かな疑問が残ってしまうのが気になってしまって。
大きな流れで見るとお話は終息しているのですが、細かい点を洗っていくと腑に落ちない点がいくつか残ってしまう。
それがあえて残された余白……という感じでもなさそうなのがちょっとモヤりが残ったところです。
こまけぇこたぁいいんだよ! お約束の熱い展開を楽しめ! って頭空っぽにできる感じの作風でもないしなぁ。
センター長の過剰演出と同じように、あまり深く考えない方がいいのかもしれません。
でもな~「深く考えないでやっていることの怖さ」を描いている作品でもあると思うので、ここで思考放棄しちゃうのは違う気がするんだよな~。
総評
傑作とまではいかないけど、良作。
↓―↓―以下ネタバレを含みます―↓―↓
登場人物への感想
福来あざみ
我らが主人公あざみちゃん。
実は一話時点では苦手なタイプすぎて、ちょっと脱落しそうになっていた。
情報学部なのにいくらなんでもSNS(というかインターネット社会)に疎すぎ、世間にも疎すぎで、プレイヤーに世界観を説明するための「あざとくてかわいいアホ」登場人物感があってすごい苦手意識がありました。美桜ちゃんの擁護書き込みの件とか。
ただ、三話四話くらいから、「この物語には、このあざみちゃんの(過剰といえるほどの)素直さと善性が必要なんだ」と気づいてからは好きになっていった子です。
実際、ジャスミン先輩や富入さんとの信頼は、善性が服着て歩いてるみたいなあざみちゃんだからこそ築けたものだと思うので。
だからこそ最終話のダメージがだいぶデカいんですが……。
苗字の福来はもちろん福来るなんでしょうが、名前のあざみは恐らく花の「薊(アザミ)」と「欺く」からでしょうね。
花のアザミの花言葉は「独立」「報復」「厳格」「触れないで」など。もう勘弁して。
廻屋渉
我らがセンター長。都市伝説オタクのやべーやつ。
リアル電話イベントには参加できなかったのですが、動画で拝見しました。クソデカ大声の音割れファビュラスにこっちも変な声出ました。
オカルト好きのネジが飛んだ儚げ青年(倫理観アレ)は嫌いなオタクおらんやろと主語のデカいことを申しますが、実際、真相を踏まえてもよくできた造形だと思います。
「あざみちゃんの脳内整理に当然のように割り込んでくる」辺りで既にん?とは思っていたのですが。
車椅子なのは「あの場から動けない≒歩が仕込んだ場所からしか他者へ存在を示せない」ことの暗喩なのかな。
存在が怪異じみてるとはあざみちゃんも言ってましたが、実際ほぼ怪異ですよね。人為的な怪異。
「電話越しにやりとりしている相手が本当に実在すると証明できますか?」みたいな。いかにも都市伝説とか怪談に出てくるような存在として作られている感じがします。
ネジ飛んでる部分は歩が大きいとしても、都市伝説を前に楽しげにしている様子が生前の如月教授のイメージだとしたら、切ないなあと思います。実際、特定も解体もめっちゃ楽しそうですしね。
止木休美
ジャスミン先輩たすけて!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
最初はやる気ない系先輩かと思えば面倒見もよく、ちゃんとフォローも入れてくれる、車は回してくれてドロップキックも入れてくれる。こんな頼りになる先輩いる???
本当に名前通り、止まり木のような人です。絶対マイナスイオン出てる。
あざみちゃんの項でも話した「美桜ちゃんへの誹謗中傷に対する擁護書き込み」のとき。
あざみちゃんに「やったことは悪くないけど、やった場所とタイミングは超まずいと思った」と、良かったところ、悪かったところを明確に分けてあざみちゃんに言ってくれたところで信頼度がカンストしました。一話じゃん。
いてくれるだけで心強かったです。だからジャスミン先輩が体調崩した四話は早く解決しなきゃが先だってあんまり覚えていなかったりする。
警視正ってクソえらい人って認識だったんですが、後から調べてもやっぱりクソえらい人でした。
現場たたき上げからだとどう頑張っても年齢50代になるらしく、となるとどう見ても若い方のジャスミン先輩はキャリア組ということに。
SNSで上級国民()が叩かれてた時は、ある意味ジャスミン先輩にも矛先が向いてたってことになるんですよねえ。
あのあたり、ジャスミン先輩のリアクションを伺いながらSNS調査していたのですが、あまりにも何も変わらない、気にしない、いつも通りの姿にますます安心した記憶があります。
センター長に愚痴を垂れ、あざみーとタッグで都市伝説調査を進めていく姿は、ずっとこうあってほしいと思う姿でした。
だから最終話のダメージがデカいんですが……。
富入さん
個人的お気に入りのため。
富入さんとジャスミン先輩、付き合い長そうな気がしませんか?
SNS調査の時とか、車内での会話とか、ジャスミン先輩がいないにも関わらず安心感があったのって、富入さんが近い雰囲気を持ってたからじゃないかなと思います。ほら、一緒にいると雰囲気が似るって言うし。
デモ騒ぎの時のセンター前で富入さんに拾ってもらったとき、マジで心の底から安心しました。
だから最終話のダメージがデカいんですが……。
如月歩
存在自体がネタバレすぎるのでなかなか語りにくいですが、すべての根源である以上語らないわけにもいかないなあと。
概ね目的と手法はゲーム内で示されていますし、とんでもないハッカーということを踏まえれば大抵のゲーム内の疑問や矛盾を踏み倒せてしまうパワーがあるがゆえに、クリア後の今、気になる点が結構あるというかなんというか……。
あざみちゃんが真相を知らず、センター長は知っている振る舞いを見せていたことから、いわゆる多重人格的な状態にあったことは間違いないと思います。
ただ、善性の擬人化のようなあざみちゃんはともかく、事件の思惑を知っているはずのセンター長も、あざみちゃんとその周囲を事件解決に導くような態度を取っているような……。
とここまで書いて気がついたんですが、そういえば事件、解決してないですね。非解決になったから。
ただただ、いろいろな出てはいけない情報があふれて、世は混乱に陥って、でも気がついたら元に戻った、くらいの。
歩の目的は失われた事件を世間に知らしめて、本当の犯人に復讐することだったはず。
あーでも、HDDが配信された時点でそういった点での復讐はこの上ない形で達成されているのか。
しかもこの事件も非解決事件となったことで、被害者になるはずの犯人たちは被害者にすらならない。なれない。
歩は復讐を達成して姿を消した、と。
ならなんでエピローグでジャスミン先輩とあんな再会するんだ~~~~~~わかんねえよお~~~~~~。
このスッキリしない感は、本編中で「如月歩」は一言も喋っていない、意図がわからないから、ということもありそう。
トシカイくん
実はいちばんぞっとさせられた。
確か最後のSNS調査で「センターにいるっていうトシカイくんとかいうマスコット見たことない」みたいな書き込みを見た時が、このゲームやってていちばんぞっとしたかもしれない。
妙に腹立つ顔と動きと語り口であれだけ平然と手帳にいたのに、見ていたのは自分だけ(あざみちゃんだけ)っていうのが……ハイ……。
ネタバレ総評
正直なところ、スタッフロールが流れたときに「これで終わり?」とも思ったし、エピローグを見ても「これで終わり!?」と思いました。
絶対、如月歩関連でもうひとひねりあるはずの流れだったじゃん!
でもこうして、クリア後に長文垂れるくらい心に残った物語なのも事実です。あれからずっと主題歌の『奇々解体』、頭から離れないし。
ここまで書いていて、たぶん自分の中で一番のクリア後のもやもやは、ジャスミン先輩や富入さん(ひいてはプレイヤー)が信じた「あざみちゃんの善性」が裏切られたままなことなんだろうと思います。
そんな善性は存在しなかったと言うならば、如月歩から「福来あざみなんて存在しなかった」と突き付けてほしい。
福来あざみは確かにいたというならば、せめてジャスミン先輩とは再会させてあげてほしい。あんな形じゃなくて。
理屈で証明できない終わり方をして「都市伝説っぽいよね……」じゃなくて、明確に「それを引き起こした人間が恐ろしい」描き方をずっとしていると思っていたので、それを貫いて如月歩も本人を出してちゃんと描いてほしかった気持ちもあります。
資料や読み物、SNS調査テキスト全部読んで総プレイ時間は10時間弱。
自分は読むの早い方だと思ってるので、平均的にはもうちょっとかかるのかしら。
グラフィック演出やそれに伴う雰囲気は間違いなく傑出してるけれど、ミステリー・サスペンスものとしては後から考えた時の粗が気になっちゃってオススメできるかというとう~ん……という感じ。
それこそこれを入口に、よく比較に挙げられる逆転裁判やパラノマサイトを遊んでみよう、となるなら良いかも。逆はない。
最近の自分の中で同じくらいのプレイ時間のゲームだと、オブラ・ディン号の方がプレイ後の満足度は高かったなぁ。難易度が違いすぎて比較にならないか。
でも面白かったよ!